日本の過去2千年間の地磁気方位変化

人間による地磁気(方位)変化の連続的な観測は17世紀ころから行われているようです。また、機械を用いた組織的な観測(3成分)は19世紀半ばよりヨーロッパで始まり、20世紀に入ってから各地で続けられています。その結果が、こちらのような成果(IGRF)などとなっているのです。

それより以前の地磁気の様子を知ろうとすると、どうしても古地磁気学的な手法に頼らざるを得ません。その対象は、湖底や海底の堆積物、火山から噴出した溶岩などさまざまありますが、浅い時代で信頼性の高い残留磁化を持っているものの代表は考古学試料です。 それも、考古遺跡から出土する土器やレンガのかけら土器を焼いた窯(かま)の跡は有力な古地磁気の対象になります。いずれも、作成時あるいは使用時に大変よく焼かれていますので、素性の良い熱残留磁化を保持しているからです。しかも、多くの試料は年代がよくわかっています。 このように、考古学試料を用いて古地磁気学てきな測定をする学問を特に考古地磁気学と呼びます。

考古地磁気学はヨーロッパで大変発達しています。また、日本でも1950年代よりたくさんの試料が測定されてきました。 ここでは、日本各地から出土した、主に窯跡の床に残った残留磁化を測定して求められた考古地磁気学による過去2000年間の方位の変化を紹介しましょう。

Shibuya(1980)による永年変化モデル

Shibuya (1980)は日本各地で出土・測定された考古地磁気データを収集してまとめました。

Last 400 years field
横軸=偏角(東向き=正)、縦軸=伏角(下向き=正)

地磁気は2000年間でこれくらい変化しています。 では、これをGoogle Earth の地球を「単位球」と見立ててその表面に投影してみましょう。

Last 400 years field
スナップショット(クリックで拡大):

上の平面図に比べて、伏角が深い領域の形がだいぶ違いますね。 古地磁気学では通常単なる平面図を使わずに、球面投影したものを2次元上で表すような「等積投影」によるプロットを使います。(これをシュミット・ネットと呼びます)この図法上では誤差円(球面上の小円)のようなものは円になりません。しかし、Google Earth 上に投影すれば、視点を自由に変えられますので、誤差円はちゃんと円であることがわかります。 実は、この一見当たり前のことは、古地磁気を学ぶ学生さんにとってはちょっと当たり前でなかったりします(シュミット・ネット上のプロットを見慣れ過ぎているからでしょうか)。
また、Google Earthを使うことで、時間軸上を動かすこともできます。

Reference:
Shibuya H., Geomagnetic secular variation in Southwest Japan for the past 2,000 years by means of archaeomagnetism, M.E. thesis, Faculty of Engineering Science, Osaka University, pp. 54, 1980.

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Copyright: The MAGE Project Team & Tadahiro Hatakeyama, Information Processing Center, Okayama University of Science, Japan