地球ダイナモ:グラッツマイヤーらのモデル(1999)

以下はアメリカのグラッツマイヤーら(Glatzmaier et al., 1999)によるダイナモシミュレーションの計算結果です。地球の時間と対応させるとおおよそ1万年分になります(オリジナルのデータは30万年分あります)

ひとつ前の 櫻庭らのモデルと決定的に違うことは、 非常に激しく変化していることです。理由はいくつかありますが、計算上の最大の違いは「境界条件」というものにあります。グラッツマイヤーらは、地磁気が作り出されている外核の表面(つまりマントルの底)における熱的条件を、地震学から推測されるような不均質を考慮して計算してみました。
(マントルは対流していて、表面から冷たく重いものが落ち、底から暖かいものが上昇しています。マントルの底で見ると、落ちてきたばかりの場所は冷たく、今まさに上昇している場所は暖かいのです。これを外核側から見ると、上が冷たい所では一生懸命温めようと熱が大量に逃げていきますし、上が暖かい所ではもう温ためきっているので熱はたいして逃げません。)

その結果、ダイナモで引き起こされる磁場が激しく変動するようになりました。そして、この境界条件下ではなんと、逆転が起こりやすいことが分かりました。 実際の地球における逆転途中の地磁気と単純に比較することはできませんが、「地磁気逆転を再現すること」は数値シミュレーションが目指していた一つの目標です。
(ただし、このモデルは10年ほど前のもので、本物の地球からは少しかけ離れた計算をしているのことも事実です。現在では、より地球に近いモデルが計算されつつあります。櫻庭らのモデルはこうした地球に近い計算領域での例です。グラッツマイヤーらのこのモデルは「逆転の要因の1つが、外核表面の熱的条件によるのではないか」ということを示した重要な結果なので、現在でも引用されています。)

スクリーンショット(クリックで拡大): 磁力線と外向き成分(Br)
geodynamo model by Glatzmaier et al. (1999)

ファイル:1回の逆転を含む約1万年分のKMLファイル

ファイル:1回の逆転と1回のエクスカーション(?)を含む約4万年分のKMLファイル
(少し重いです。Google Earthの動きが早すぎるかも知れません。)

Reference:
Glatzmaier, G. A., R. S. Coe, L. Hongre and P. H. Roberts, The role of the Earth’s mantle in controlling the frequency of geomagnetic reversals, Nature, 401, 885-890, 1999.

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